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トレヴィの泉に投げ込まれるお金の総額

ローマの街角に、ひときわ輝きを放つ場所があります。石畳の道を歩きながら角を曲がった瞬間、目の前に広がるのは、まるで時が止まったかのような幻想的な風景。そこにあるのが、世界中の人々を魅了し続けてきた「トレヴィの泉」です。

この場所を訪れたことがある人は、あの荘厳な彫刻群と水の音に包まれた瞬間の感動を、きっと一生忘れないでしょう。まだ訪れたことのない人にとっても、映画や写真、そして数々の物語の中で、その存在はすでに心のどこかに刻まれているのではないでしょうか。

まず驚かされるのは、そのスケール感です。高さ約25メートル、幅は約20メートル。ポーリ宮殿の壁面を大胆に使って作られたこの巨大な泉は、バロック芸術の粋を集めた作品としても高く評価されています。中央に堂々と構えるのは、海神ネプチューン。その両側には二頭の海馬が控え、左手には豊穣の女神ケレース、右手には健康の女神サルース。まるで物語の中に入り込んだかのような臨場感があります。

しかし、この壮麗な泉の歴史は、決して一朝一夕で築かれたものではありません。その起源は、なんと古代ローマ時代にまで遡ります。時の皇帝アウグストゥスが整備した「アクア・ウィルゴ(水の乙女)」と呼ばれる水道の終着点として、この場所にはすでに泉が存在していたのです。

現在の姿が完成するのは18世紀。1730年、教皇クレメンス12世が噴水のデザインを公募したことで、運命の歯車が動き出しました。選ばれたのは建築家ニコラ・サルヴィ。彼のデザインが採用され、1743年にその生涯を終えるまで、泉の完成に心血を注ぎました。サルヴィの死後、ピエトロ・ブラッチが彼の遺志を引き継ぎ、1762年にようやく完成を迎えたのです。まさに人の想いと時間が重なり合って誕生した芸術といえるでしょう。

そして、トレヴィの泉といえばやはり「コイン投げ」の伝説は欠かせませんよね。観光客の多くが背を向けて右手でコインを投げるこの光景、見たことがある方も多いのではないでしょうか。実はこの行為には願いを込める意味があり、1枚投げれば「再びローマに戻って来られる」、2枚なら「素敵な恋人と出会える」、3枚投げると「現在の恋人と別れられる」という噂があるのです。

もちろんこれは迷信とも言われますが、不思議と泉の前に立つと、「願いを託したくなる」そんな気持ちが自然と湧いてくるのが、この場所の魔法なのかもしれません。誰しもが抱える、小さな希望や切なる想い――それをそっとコインに込めて、水面に放る一瞬。たとえそれが儀式のようなものであっても、心に区切りをつけるきっかけになっているのではないでしょうか。

実際、この泉に投げ込まれるコインの総額は、年間でなんと約140万ユーロにものぼります。このお金は地元のカリタス(慈善団体)によって、生活に困っている人々への支援に使われているとのこと。観光客の夢が、誰かの現実の支えになっている――そう思うと、なんだか心が温まりますよね。

また、トレヴィの泉はその美しさを保つために、これまで幾度となく修復が行われてきました。中でも記憶に新しいのが、2014年に実施された大規模修復。イタリアのファッションブランド「フェンディ」が資金を提供し、「FENDI for FOUNTAINS」というプロジェクトのもと、泉は見事に生まれ変わりました。文化とファッション、そして伝統が融合したこの取り組みは、世界中から称賛を集めたのです。

もちろん、その美しさゆえに、数々の映画作品にも登場しています。とりわけ有名なのが、フェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活』。泉の中を歩くアニタ・エクバーグのシーンは、映画史に残る名場面として語り継がれています。また、『ローマの休日』では、オードリー・ヘプバーンとグレゴリー・ペックが繰り広げるロマンティックなひとときが描かれ、泉のイメージにさらなる魅力が加わりました。

そう考えると、トレヴィの泉はただの観光地ではなく、人々の「物語」を受け入れてきた場所だとも言えます。恋の始まりや終わり、旅の期待や別れの涙、それぞれの時間が、この泉の水音と共に流れ続けているのかもしれません。

ちなみに、泉の水は飲めませんが、その脇に設けられた水飲み場では、古代から続く水道の恵みを口にすることができます。ただし、泉の中に入ったり、コインを拾ったりする行為は厳しく禁止されており、場合によっては高額な罰金が科せられるので注意が必要です。実際、観光客の増加に伴って警備も強化されており、安心して訪れられる環境が整備されています。

最後に少し、名前の由来にも触れておきましょう。「トレヴィ」とは、ラテン語の「trivium(三叉路)」に由来していると言われています。実際、この泉は三つの道が交わる場所に建てられていることから、この名前が付いたとされています。

どこまでも語りたくなる、この美しき泉。写真で見るより、映像で見るより、実際にその場に立った時の感動は比べものになりません。水の音、石の温もり、人々のざわめき。そして何よりも、自分の願いをこめた一枚のコイン――。それは、旅の中でしか出会えない、かけがえのない体験になるでしょう。

あなたなら、どんな願いを込めてコインを投げますか?

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